我家にテレビがお出ましになり、毎日視るようになったのは昭和34年のこと。当時は小学六年生だった。キー局のある関東や関西の大都会ならいざ知らず、九州・大分ではNHK(チャンネル1)のほか開局したばかりの大分放送(OBS;チャンネル5)の2局しか映らなかった。しかも、今日のような24時間態勢でなく、OBSの場合平日は夕方5時(土曜正午)頃からしか放送されなかった。
もちろん、子供向け番組が中心だったけれど、終日放送でないうえチャンネル数も二つしかないのだから選択の余地などあろうはずもない。親が決めた時間内で、視聴可能な番組は全て視ていた。秋(とき)のTVヒーローは子供向け番組で知ったわけだが、著名映画スターともなれば新興のTV劇などに出るはずもなく、吉永小百合、藤田弓子、和泉雅子ら後のスター連でさえ子役としてTV劇デビューした頃の話である。
子供向けでない番組で憶えているのは、『事件記者』(NHK;昭和33年)と『バス通り裏』(NHK;昭和33年)。どちらも生放送だったと思う。ゆゑに、台詞を忘れたり、舞台裏が写ってしまったりの“放送事故”がママあったのがご愛敬。むしろ、撮り直しが利かない張り詰めた緊張感が堪らなかった。当世ドラマの弛緩しきったダラダラ劇がウソのよう。この二つのドラマで初めて知った顔ぶれは多い。それを列挙しておこう。
事件記者
警視庁記者クラブ、行き付けの飲み屋「ひさご」、喫茶店「アポニー」しか出て来ないと言っても過言でないほど場面が限定されていた。
・永井智雄・・・東京日報相沢キャップ(愛称;キャップ)
・原保美・・・東京日報長谷部記者(麻薬のべーさん)
・大森義夫・・・東京日報八田(ハッタさん/八田老人)
・滝田裕介・・・東京日報伊那記者(イナちゃん)
・園井啓介・・・東京日報山崎記者(ヤマさん)
・外野村晋・・・新日本タイムズ熊田キャップ(クマさん)
・清村耕次・・・新日本タイムズ荒木記者(オトボケのアラさん)
・前田昌明・・・新日本タイムズ青海記者(セイカイどん)
・藤岡琢也・・・新日本タイムズ矢島記者(ヤジさん)
・高城淳一・・・中央日日浦瀬キャップ(ウラさん)
・山田吾一・・・中央日日岩見記者(ガンさん)
・近藤洋介・・・中央日日白石記者(シロさん)
・守田比呂也・・・毎朝亀田記者(カメちゃん)
・野口元夫・・・警視庁山本部長刑事(ヤマチョウ)
・藤岡重慶・・・警視庁遠藤刑事(エンちゃん)
・八木千枝・・・警視庁職員(おミッちゃん)
・坪内美詠子・・・「ひさご」の女将(おチカさん)
・藤田典子・・・「ひさご」のお運びさん(ナナちゃん)
・清水元・・・「アポニー」のマスター(田川のオッチャン)
記した出演者は全員、今でも役名とともに顔貌が脳裏に残っている。。
バス通り裏
こちらも舞台となるのは、路地を挟んだ美容院と高校教師宅がほとんど。平日午後7時15分からの帯番組かつ夕食時とあって、欠かさず視ていた。物語も普通の家庭にありがちな話題ばかりなので、出演者を実生活でも近所の人々であるかのように錯覚するほど親近感があった。配役のデータがないので、憶えている出演者だけを挙げておく。
小栗一也、十朱幸代、織賀邦江、武内文平、露原千草、佐藤英夫、岩下志麻、
田中邦衛、米倉斉加年、宮崎恭子、幸田宗丸、荒木一郎、長浜藤夫、初井言栄、
大森義夫、鈴木瑞穂、常田富士男、賀原夏子ほか
ウィキペディアに拠ると、戦後10年を経てアプレ(戦後派)と称する荒廃した若者が大量出現するに至って、教育・道徳的な番組作りに腐心したとあるが、そんな説教臭さは微塵も感じなかった。
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