クラシック(古典音楽)に興味を覚えたのは中一の頃、半世紀(50年)以上も昔のことである。けれども、関心に偏りがあって殆どが独墺系を中心とする管弦楽曲ばかり。声楽曲、宗教曲、室内楽・器楽曲などは興味の対象外であった。大学生時分に学友どもと弾けもしないギター倶楽部なる同好会を発足させた関係上、楽譜ピースの一部に在ったことから、バッハ器楽小品への指向が膨らんだものの、他作曲家のものまで拡がらなかった。なかんずく、ピアノ曲が食わず嫌いで、大作曲家のピアノ協奏曲を除いて保有盤皆無に近かった。
しかし、まだ現役だった四半世紀ほど前、レコード鑑賞(といっても世はDVD,CDのデジタル時代に入っていたが)同好会を通じて知り合ったピアノ通の友達に感化され、少しはピアノ曲も聴くようになった。彼は現在、ベトナム・ホーチミン市(旧サイゴン)に生活の居を移しているが、引っ越に際して譲り受けた本に“あらえびす(「銭形平次」作者野村胡堂の別筆名)著『名曲決定版(上・下巻)』(中公文庫)”がある。
この上巻186ページに、ヴラディーミル・ド・パハマン(Vladimir de Pachmann, 1848年-1933年)が紹介されている。パハマンの名を知ったのは、これより少し前、音楽評論家宇野功芳の書物が先だが、SP盤復刻CDを現実に入手して以来、すっかり魅せられてしまった。ショパン存命中の“幕末”に生まれた演奏家だけに、ショパン自作自演や斯くありなんと思わせてくれる。否、正統派というより仄暗い翳りを湛えたやや病的なショパン演奏ではある。“ショパンのノクターン”は、流行歌『喫茶店の片隅で』(松島詩子;昭和30年)の歌詞のなかでしか知らなかったけれど、少女趣味との譏りを受けようと好きだなぁ。
ショパンの夜想曲(ノクターン)
夜想曲第1番 変ロ短調 op.9-1
夜想曲第2番 変ホ長調 op.9-2
夜想曲第3番 ロ長調 op.9-3
夜想曲第4番 ヘ長調 op.15-1
夜想曲第5番 嬰ヘ長調 op.15-2
夜想曲第6番 ト短調 op.15-3
夜想曲第7番 嬰ハ短調 op.27-1
夜想曲第8番 変ニ長調 op.27-2
夜想曲第9番 ロ長調 op.32-1
夜想曲第10番 変イ長調 op.32-2
夜想曲第11番 ト短調 op.37-1
夜想曲第12番 ト長調 op.37-2
夜想曲第13番 ハ短調 op.48-1
夜想曲第14番 嬰ヘ短調 op.48-2
夜想曲第15番 ヘ短調 op.55-1
夜想曲第16番 変ホ長調 op.55-2
夜想曲第17番 ロ長調 op.62-1
夜想曲第18番 ホ長調 op.62-2
夜想曲第19番 ホ短調 op.72-1
夜想曲第20番 嬰ハ短調(遺作)
夜想曲第21番 ハ短調(遺作)
一般的に“ショパンのノクターン”と言う場合、単に「第2番」を指すほど有名曲だが、あまりに通俗的過ぎる。個人的な好みば、断然第8・19番を採る。第8番ならデイヌ・リパッティの名盤があるが、なんてたって老いたりと言えどもパハマンには電気(マイク)吹込初期の録音がある。本来の演奏は機械(ラッパ)吹込時代のものか知れないが、金盥を叩くような如何にも貧弱な録音が腹立たしい。
01.ショパン『夜想曲第19番』(1927年-昭和2年-電気録音)
01 Chopin_ Nocturne In E Minor Op. 72_1
02.ショパン『夜想曲第8番』(1925年-大正14年-電気録音)
02 Chopin_ Nocturne In D Flat Op. 27_2
03.ショパン『夜想曲第4番』(1911年-明治44年-機械録音)
03 Chopin_ Nocturne In F Op. 15_1
04.ショパン『夜想曲第12番』(1912年-明治45年-機械録音)
04 Chopin_ Nocturne In G Op. 37_2
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