J.S.バッハのカンタータ(交声曲)は大好物のジャンルに違いないけれど、お説教でも聞かされるような堅苦しい教会カンタータだと日常聴くにはさすがにへこたれる。そこへゆくと世俗カンタータなら、コーヒーでも飲みつつソファに寝そべって気軽に愉しむことが出来る。自分がコーヒー党のせいもあって、なかんずく下記音源のBWV211《コーヒーカンタータ》が大のお気に入り。
・カール・フォルスター指揮ベルリンフィル(1960年録音;EMI盤)
リーザ・オットー(ソプラノ)、ヨーゼフ・トラクセル(テノール)、
ディートリヒ・フィッシャーディスカウ(バス)
歌詞の意味を理解して聴くと愉しさが倍増すること間違いなし。
川端純四郎氏の和訳を次のとおり拝借
第1曲;レチタティフ(テノール)-0分15秒
お静かに、おしゃべりなさらずに。
お聞き下さい、何が始まるのか。
やってきましたのはシュレンドリアン(旧弊居士)氏と娘のリースヒェン、
父親は、まるで熊のようにうなっています。
何があったのか、どうぞお聞き下さい。
第2曲;アリア(バス)-0分44秒
まったく子どもというものは、厄介千万なもの。
毎日、私が、何を娘のリースヒェンに言って聞かせても、
何の実も結びはしない。
第3曲;レチタティフ(バス、ソプラノ)-3分53秒
(父)悪い子、しょうのない娘、
ああ、いつになったら言うことを聞くのか、 コーヒーをやめなさい。
(娘)お父さん、そんなにカリカリしないで、一日に三度、
小さなカップでコーヒーを飲まなかったら、
私は苦しさのあまり、干からびた山羊の肉のようになってしまうわ。
第4曲;アリア(ソプラノ)-4分29秒
アイ、何とコーヒーの美味しいこと、
千のキスよりうれしく、マスカットワインよりまろやか。
コーヒー、コーヒーはやめられない、
私の機嫌を取りたい人は、そう、コーヒーをプレゼントして。
第5曲;レチタティフ(バス、ソプラノ)-8分52秒
(父)もしお前がコーヒーをやめないなら、
結婚パーティーにも行かせないし、外へも出してやらないぞ。
(娘)結構よ、コーヒーさえあれば。
(父)まったく、この子猿娘め、
それなら流行の鯨骨でふくらませたスカートも買ってやらないぞ。
(娘)はい、はい、よく分かりました。
(父)窓辺に立って、道行く人を眺めるのもだめだ。
(娘)どうぞお好きなように。
ただ、コーヒーだけは残してね。
(父)私の手から、金や銀のリボンを、お前の帽子の飾りに
買ってもらえるなどと思うなよ。
(娘)ええ、ええ、私の楽しみさえあれば。
(父)何としょうのないリースヒェン、全部我慢すると言うのだな。
第6曲;アリア(バス)-10分7秒
娘、強情な娘、これに勝つのは難しい。
しかし、つぼをおさえれば、そうだ、うまく行くかも知れないぞ。
第7曲;レチタティフ(バス、ソプラノ)-13分12秒
(父)さあ、父親の言うことを聞きなさい。
(娘)はい何でも。コーヒーのこと以外ならね。
(父)よろしい、それなら、夫が手に入らなくてもかまわないのだね。
(娘)何ですって。夫ですって。
(父)私は誓う、絶対にだめだ。
(娘)私がコーヒーをやめない限り?
それなら決まり、コーヒーはおしまい。
お父さん、聞いて、決して飲まないわ。
(父)それでこそ、良い人が手に入るというもの。
第8曲;アリア(ソプラノ)-14分0秒
今日にも、すぐ、大好きなお父さん、見つけて来て。
ああ、良い人を。 本当に私にぴったりの人を。
すぐにでも、そうなりますように!
私がついにコーヒーのかわりに、
今晩、ベッドに入る前にでも、すてきな恋人を手に入れられますように!
第9曲;レチタティフ(テノール)-23分0秒
そこで老シュレンドリアン氏は出かけて、娘のリースヒェンのために、
すぐにも夫を見つけてやろうと探しました。
ところがリースヒェン、ひそかに言いふらすには、
どんな求婚者も、事前に約束して、
好きな時にいつでもコーヒーを入れることを認めると、
結婚誓約書に書かない限り、私の家にはいれません、とね。
第10曲;合唱(三重唱、ソプラノ、テノール、バス)-23分46秒
猫はネズミがやめられない、娘たちはいつでもコーヒー党、
母さんもコーヒー大好きで、おばあちゃんもやっぱり飲んでいた。
それなら誰が娘を叱れよう。
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