その昔、昭和40年代に『木下惠介劇場(後に“アワー”と改称)』(TBS系)という30分ドラマ枠があった。ホームドラマ全盛期にあって、家族ぐるみで愉しめる意味では確かに【ホームドラマ】に違いないが、必ずしも画一的な内容ではなかった。もちろん、全てをリアルタイムで視ていたわけではないが、時系列に沿って全25作を列挙しておこう。
01.三人の事(昭和39年)
02.あっけらかん(昭和39年)
03.見知らず柿(昭和39年)
04.お好み焼きてんまつ記(昭和40年)
05.まだ寒い春(昭和40年)
06.石の薔薇(昭和40年)
07.喜びも悲しみも幾歳月(昭和40年)-大辻伺郎、松本典子、佐野周二、関口宏
08.二人の星(昭和40年)
09.記念樹(昭和41年)-馬淵晴子、高杉早苗、山口崇、田村正和、関口宏、松本典子
10.今年の恋(昭和42年)
11.女と刀(昭和42年)
12.もがり笛(昭和42年)-江原真二郎、竹脇無我、西尾三枝子、花沢徳衛
13.おやじ太鼓(昭和43年)-進藤英太郎、風見章子、園井啓介、香山美子、竹脇無我
14.3人家族(昭和43年)-竹脇無我、栗原小巻、あおい輝彦、沢田雅美
15.おやじ太鼓2(昭和44年)-進藤英太郎、風見章子、園井啓介、香山美子、竹脇無我
16.兄弟(昭和44年)-【津坂匡章、秋山ゆり、北村和夫、津島恵子、菅原謙次】
17.あしったからの恋(昭和45年)
18.二人の世界(昭和45年)-【竹脇無我、栗原小巻、あおい輝彦、山内明、文野朋子】
19.たんとんとん(昭和46年)-【ミヤコ蝶々、森田健作、近藤正臣、杉浦直樹、花沢徳衛】
20.太陽の涙(昭和46年)
21.幸福相談(昭和47年)
22.おやじ山脈(昭和47年)
23.思い橋(昭和48年)
24.炎の旅路(昭和48年)
25.わが子は他人(昭和49年)
このうち、少しでもリアルタイムで視た憶えがあるのは、07・09・12・13・14・15のみ。既に記事にした情報であるものの、昨年4月よりCS294ホームドラマチャンネル(有料)にて14・16・18・19が再放送されている。『二人の世界』の場合、主題歌がそれなりにヒットして知ってはいたが、ドラマ自体は意外や今回が初見であった。昭和45年といえば、おのれ自身がペエペエの新入社員だったわけで、連日コキ使われてテレビを視る余裕すらなかったのだろう。
地上波・衛星放送を問わず電波にのる再放送番組は、何故かカラー化された昭和40年代以降ばかりで、テレビ創成期の昭和20・30年代ドラマは皆無に等しい。前稿で採り上げた『風小僧』(昭和33年)なんぞ極めて稀有なケースといえよう。然りとて昭和40年代であっても、今を去ること半世紀(50年)近く昔のことゆゑ、今時のグローバリズムドラマに比べると、当時の【現代劇】でありながら、恰も伝統的【時代劇】のように見えてしまうから不思議だ。
引き合いに出して悪いが、同じチャンネルで再放送中『鹿男あをによし』(2008年;フジTV)、のオープニングナレーションを聴いて、ぶったまげてしまった。
嘗て大和國(わのくに)と呼ばれたこの地には、八百萬神(はっぴゃくまんのかみ)が
住んでいたという。
【八百萬】は古来より【やほよろづ】と読ませ、数字の【800万】とは区別される。即ち、普通名詞【八百屋】を【はっぴゃくや】でなく【やほや】と読ませるが如く、【数限りなく多いこと】を意味する語に他ならず、もともとが基数詞ではないのである。万城目学(昭和54年生)の直木賞候補にもなった小説が原作らしいが、台本の【八百萬】部分にルビが振ってあるとは考え難く、おそらくナレーター(中井貴一;昭和36年生)の単純な読み違えであろう。それにしてもスタッフ全員誰も気付かぬとは、むしろこのほうが【カルチャーショック】である。いや、ナレーターよりスタッフ陣のほうがさらに若いようなので、【はっぴゃくまん】を信じ込んで誰一人疑わなかったのかも。
どうでもいいけど、原作者万城目氏は、【まんじやうめ】でなくて【まきめ】さんとお呼びするのだとか。また、脚本を書いた相沢友子(昭和46年生)さんは、奇しくも『木下惠介アワー』放送時分に生まれた世代なのですね。
《次稿へ続く》
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