先月、イタリア製真空管ポタアンCarotOne Fabriziolo EXを手に入れたばかりなのに、物欲が止まらずまた買っちゃった。今度は国産品(MADE IN JAPAN)の真空管ポタアンFostex HP-V1。ファブリジオーロに音質的な不満があるわけではないしむしろ気に入っているほうだが、何せAC電源必須の室内用途限定という部分が痛い。
屋外で使いたいと言っても、旅行に出た際、せいぜい機内で聴くぐらいしか使う場はないのに・・・。なまじ(知らなかったが、「憖」の漢字をあてるらしい)小金があるゆゑ、欲しくなったら何でもすぐ喰いついちゃうんですよね。
ところが、現物を目の当たりにしてぶったまがった。ポタアンのクセして据置用途のファブリジオーロより遙かにデカイし重い。したがって、「なんだかなぁ」ってつい思ってしまうが、「音」のほうは超一級品。これまで満足していた“人参ちゃん”なんか足下にも及ばない。それほど音の厚み、迫力、臨場感など、全てに於いて素晴らしい。
さて、前々稿(ブルックナーの音楽)でクラシック(古典音楽)について触れた。その中で、三大B(バッハ、ベートーベン、ブラームス)+ブルックナーが好きと書いたが、これは少し後年になってからの好みに過ぎない。高校生時分は、とりわけバッハとワグナーに熱中していた。LPレコードに組物(セット物)が多いのもそのためである。
バッハの管弦楽曲や器楽曲等に関心があって不思議ではないが、高校生の分際で《マタイ》や教会カンタータ等宗教曲を好んで聴くなど、我ながら変わった生徒だったようだ。また、高校生にしてワグネリアン(ワグナー信者)というのも恐れ入る。これには、NHKラヂオのクラシック番組の影響が大きい。
今となっては番組名は憶えてないが、毎朝7時前後にはバッハのカンタータが連続放送されていた。また、FMでは毎年8月にバイロイト音楽祭がババリア放送協会による実況録音で流されていた。まだクナッパーツブッシュ(1965年没)が存命だった頃の話である。ただ、この頃のクナは《パルジファル》しか振らなかったので、この演目だけ翌年の聖金曜日頃に放送されていた。
何より《ニーベルンクの指環》を四日間連続して聴けることが嬉しかった。確か指揮者はルドルフ・ケンペだった。記録に拠ると1963年以前である。但し大分在住(1962年7月まで)時に聴いた憶えはない。そうすると、高校一年だった1963年(昭和38年)から聴き始めたわけだ。
で、ワグナーのレコードを最初に買ったのが、名盤の誉れ高きクナの《パルジファル》-1962年バイロイトライブ-。ひぇ~~、なんと今や税込五万四千円もするんだ。買った当時、一万円だったけど。件の《ニーベルンクの指環》全曲レコードは、誰あろうカラヤン指揮ベルリンフィルなのだからびっくり仰天。この頃(高校時分)は、何でもカラヤンだったみたい。つまり、音楽評論家(専門家)の評判は芳しくなかったものの、カラヤンはこうした大曲でも、宛らポピュラー(大衆)音楽のように「美音」を奏でてくれるので、素人受けしたのである。
ワグナーの変わり種レコードも所有している。《「ニーベルングの指環」ライトモチーフ集》がそれ。日本語版はNHKアナの篠田英之介がナレーションを入れた特殊企画物だから、おそらくCD化されてないと思う。本家本元のデリック・クック(Deryck Cooke)解説盤ならCDが出ているみたい。
DENONの音聴箱(おとぎばこ)にかけて、改めて聴き直してみた。懐かしいなぁ、篠田アナの声。バイロイト《指環》のCDは、ケンペ盤(1960年モノラル)とクナ盤(1956年モノラル)を持っているが、ショルティ/ウィーンフィルのこの盤は買う気にならない。大いなる偏見かも知れないが、“虚仮威し盤”の印象が強すぎていけない。
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