待望のハイレゾ対応ウォークマン(NW-F887)をば、つひに購入せしめた。唐突に前稿仮名遣いで思うことの続きになるが、“ウォークマン”という固有名詞の日本語変換(ローマ字入力)がたいそう難儀なのですよ。【WOーKUMAN】だと“ヲークマン”だし、【UOーKUMAN】だと“ウオークマン”と「オ」が大文字になってしまう。何とか学習機能を使って変換できるようにしたものの、現代人が“ゐ(WI)”“ゑ(WE・YE)”“を(WO)”等の正確な発音を苦手とする理由が、何となく判るような気がしてきた。
話題が逸れたが、ソニー直販サイトによると、予想を大幅に上回る爆発的な人気を呼び、注文が殺到して早くも品切れだとか。自分の場合、大分滞在中の20日(発売の翌日)にヨドバシ・ドット・コムで注文し、帰宅途中に新宿西口本店で受領して事無きを得た。あぁ、よかった。
「高音質」を謳うだけあって、事実、現有iPod touch(第4世代)など足下にも及ばないほど、“音”が素晴らしい。あくまでオーディオマニアックな観方をすればそうなる。ところが、寝ホンしながら朝目覚めると、もう充電催促マークが点灯している。せいぜい5時間程度しか稼働させてないのに、幾ら何でも燃費(?)が悪すぎる。公称《35時間持続》の看板に偽りあり。これまでのiPodなら、せいぜい一週間に一度充電するだけで済んだから、ひょっとして初期不良ではないか、と疑ったほど。
購入動機はiPodに換わる“音楽再生機器(DAP)”として。しかし、商品型番【NW】が示すとおり、元々は“ネットワーク・ウォークマン”と呼ばれていた。早い話が通話機能のない携帯電話(スマートホン)のようなものらしい。したがってiPodも同様だが、WI-FIとかGPSといった自分には不要な機能がたくさん附いている。これが大変な大飯喰らいだそうで、使わずともON状態だとアッという間に電池を喰い潰すそうな。そうと知って、音楽再生に直接関係ない機能を全て無効にしたら、常識的な電池の減り具合に落ち着いた、というわけ。
“音”が素晴らしいと書いたが、実は自分の好みとは正反対。恐ろしくソリッド(硬質)かつクリア(明快)で、甚だデジタル臭い。これでは日本国内向けというより、何事にもドライな欧米人を意識した音作りではないかと勘ぐりたくなる。また、高域から低域までのレンジはかなり広いものの、いわゆるドンシャリ気味で人為的な加工臭が漂う。斯くも色気のない無味乾燥な“音”はポップス系楽曲には都合がいいのかもしれないが、メインで聴くクラシック音楽の場合、ロボットか機械による演奏みたいに響いて気が乗らない。ソニーなら感性豊かな我が日本製だろうと思いきや何のことはない、生産国はマレーシアだった。
さんざん酷評したが、以上は付属イヤホンをウォークマンに直挿しして聴いた主観に満ちた感想である。しかし、実際は次の構成で愉しんでいる。
・DAP→SONY NW-F887(マレーシア製)
・Dockケーブル→Fiio L5(中国製)
・PHPA→Pico USB/DAC(米国製)
・イヤホン→SHURE SE-535LTD(中国製)
・イヤホンケーブル→SUN CABLE Ancient Legacy(米国製)
我が日本製が一つもないのが如何にも悲しい。DAP(NW-F887)と同傾向のイヤホン(SE-535LTD)を組み合わせたらより一層ソリッドでクリアになるはずが、結果はまるで逆。あくまで想像だが、おそらく“昔の遺産”のネーミングに違わぬイヤホンケーブルと温和な音色を演出するPHPA(Pico USB/DAC)の逆ベクトルが働いて音を中和するからだろう。硬さがとれる代わりに解像度もやや甘くなるが、高域の派手なキンキン音がなくなり聴きやすい。
クラシック音楽のリファレンスにしている曲は、フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のベートーヴェン交響曲全集(1959~61年録音)に入っている「フィデリオ序曲」。ステレオながら昭和30年代の古い録音。且つ、ただでさえ古色蒼然たる音色を持つオケだけに、ソリッドでクリアな再生機器では聴くに堪えない音になってしまう。ところがですねえ、上記の組み合わせがちょうどよい案配になるのですよ。冒頭全合奏の数小節後に休止符があって、その静寂が堪らない。乾いたティンパニーの響き、派手さを控えるかのように金管楽器さえくすんで聞こえる。腹に堪える重低音ではないが、引き締まった低弦も耳に心地よい。これが直挿しだとこうはならない。むしろ、不要なテープ・ヒスやスクラッチ・ノイズまで容赦なく拾って、録音の古さを強調するから始末が悪い。
では、演奏陣が異なりますが、同曲を聴いて(視て)みよう。
☆ レナード・バーンスタイン指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ずいぶんスローテンポで、緊張感に乏しい演奏ですね。この曲のナンバーワンを挙げるとすれば、カール・ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団の日生劇場ライブ(昭和38年)が最高。その時、フジTVで放映された生(なま)映像が、未だに目に焼き付いている。CD或いはDVDとして、市販されてないのだろうか。
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