あ~ぁ、また買っちゃった。イヤホンじゃなくて、今度はポタアンのほう。iPod用として手始めに買った中国製iBasso A01が気に入らなくなったわけではない。けれども、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)を持ち歩くのは旅行に出かけるときぐらい。しかも、リタイアした現在、フリー(換言すれば、ただの「閑人」)の身ゆゑ大抵は家に居る。それにも拘わらず、iPodの親に相当するiTunesが入ったPCを使わず、わざわざ子側で聴くのもナンセンスの窮みであろう。
ところが、iBasso A01にはDAC(デジタル・アナログ・コンバーター)機能がない。超小型化の過程でDAP専用に位置づけられたのだろう。したがって、ポタアン(PHA=ポータブル・ヘッドフォン・アンプ)としてしか機能しない。音楽さえ聴ければいいのなら、PCのイヤホンジャックに挿せば事足りる。しかし、それでは子側で聴くのと変わらず、ポタアンを介す意味がなくなってしまう。音質に拘るからこそ、DAC機能付ポタアンが欲しくなったというわけ。
目指すはホンモノの米国製HeadAmp社“Pico USB/DAC”。聞くところに依るとこの会社は、近代主義の権化アメリカにあって正反対の道を行き、全てが“手作り”だとか。そのせいかどうか知らぬが、相当マニアックな商品らしく、取扱っている量販店は皆無。幾つかある国内通販店はどこも「在庫なし」或いは「売り切れ」状態。こうなるとむしろ、無い物ねだりするが如くやたら欲しくなるのが“我欲”という名の浅ましさ。輸入代行業者に依頼するか米国販売元へ自ら直接注文する方法もあるが、手続きが面倒だし手にするまで一ヶ月ほどかかる。そんな矢先、ケイズアンプという愛知県の通販店に「在庫あり」の表示を発見。売り切れたら後の祭りなので、慌てて注文したところ翌々日(20日)には到着する手際よさ。お互いの顔が見えない非対面方式の売買ながら、手作りした製造者といい迅速対応の販売者といい、何だか善い人たちに巡り会えた気がして、妙に嬉しくなってしまった。
http://www.kss08.com/amp/32_211.html
現物を手にしてまず思ったのは、予想していたより遙かに小さいし軽い。外観が本格的据置型アンプと似ているため、掲載写真を見た印象だけで判断すると、ついサイズを錯覚してしまう。面白いといってはナニだが、アンプ本体より付属品の充電用ACアダプターのほうがデカくて何とも微笑ましい。肝腎の「音」のほうは、さすがと言うほかない。PC音声をUSB経由でデジタル信号(24bit/96kHz)のまま取り込み、Pico内蔵DAC機能を使ってアナログ信号に変換し、イヤホンに出力するという仕組み。当然ながらイヤホンをPC直挿しで聴くのとは雲泥の差がある。
さて、元日にNHK-ETVで恒例の「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート」が衛星生中継(音声5.1ch)された模様をPCに録画しておいた。これをBD-Rに焼いたうえで更にMP4ファイルに変換してPC上で愉しんでいる。イヤホン直挿しでも十分聴き堪えがあるが、Picoを手にした今となっては、もう後戻りできませんね。それほど次元が違うのですよ。まるでムジークフェラインザールの音楽会場に居て、生演奏を聴いている気分にさせてくれる。
Neujahrskonzert der Wiener Philharmoniker 2013
YouTube版では未だ聴いていないが、音源が同じだから大幅圧縮音声だとしても、音色の傾向自体は変わらないはず。ウイーン風とは、角の取れたまろやかな音色のこと。最強奏であっても、聴く側の心こそ揺さぶれど決して物理的な大音量を以て聴衆に威圧を加えるものでない点に留意したい。
戦後始まったこのコンサートの開祖クレメンス・クラウスの時代は知らないが、NHKで衛星中継されるようになってからは、1989年のカルロス・クライバーが一番良かった気がする。
Carlos Kleiber New Year's concert 1989
指揮するというより、指揮台に登って踊ってる感じですね。今では伝統行事になってしまったため、曲目から何から隅々まで計画された「演出」が施されているが、この頃は「台本」に書かれてない即興演奏的魅力が残っていたように思う。だから、演奏者と聴衆が一体となっている様子が、映像を見る者(つまり私奴)にまでひしひしと伝わってくる。
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