あ~ぁ、またイヤホン買っちゃった。今度は赤色のSHURE社製SE535LTD-Jであります。42,800円もしたので、これまで買ったイヤホンの中では最高額。手にして未だ2~3日しか経っておらず、目下、慣(鳴?)らし運転中だが、高価なだけあって全てが素晴らしい。
カセットウォークマンやDAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)が出始めの頃は、付属イヤホン(ヘッドフォン)で満足していた。しかし、携帯型オーディオ機器が進化するとともに、ヘッドフォン分野の高性能化も著しい。つい二ヶ月ほど前、ゼンハイザーのIE80を買ったばかりなのに、実はイヤホンの選択自体を間違えているのではないかという気がしてきたためであります。
クラシック部門はドイツ音楽中心に聴く関係で、低域ががっちりした重厚な響きでないと聴いた気がしないんですよね。且つ“懐メロ”ファンを自認している関係上、音源自体が圧倒的多数で1960年代以前の古い録音というありさま。SP復刻盤など、高音寄りのイヤホンだと針音まで忠実に拾うので、“竹藪の火事”になりはしまいか。そういう心配があって、ついつい低音寄りのイヤホンを好んで使っていたのでした。
ところがですねえ、このSE535LTDがこれまでの認識の誤りを正してくれたように思うのです。というのも、録音技術云々以前に、ドイツ楽曲や楽団には、もともと“低域が強い”という特性がある。にもかかわらず低音寄りのイヤホンを選んでいたのでは、低域を更にブースト(増幅)するも同然。つまり、ブーミー(低音過多)な状態で聴いていたわけですね。
リヒター盤(1958年録音)の《マタイ受難曲》で比較してみると、イヤホン選択の誤りが一目瞭然となる。ステレオ初期の録音だから、各楽器の境界線が聴き分けられないほど、もともとブーミーで曖昧模糊としているのは止むを得まい。IE80では、この録音特性をそのまま伝えるので、疑似ステレオでも聴かされてるような錯覚に陥る。一方、SE535LTDで聴くと、正体を暴くかのように中間部コントラバスのうねりがはっきり聴き取れる。声楽部・各楽器の分離も明瞭。まるで覆っていた霧・霞の類が去って陽光が射したみたい。
もう一つ、アルヘンタ盤(1957年録音)の《スペイン奇想曲》を聴き比べてみた。これも古い録音だが、《マタイ受難曲》とは対照的に非独墺系のロンドン交響楽団だし、楽曲の特性もあって明快且つ賑やかに録られている。IE80で聴くと、低域が強調されてドイツ音楽的な重厚さが加わる反面、高域に共振めいたシャリつきが出てうるさくはないが聴感をかなり損ねる。対するSE535LTDでは、低域の量こそIE80には適わないが、質的には必要充分なものであり、音量を上げてもメリハリの効いた高域にやかましさはなく、愉しく聴けるところは偉としたい。ケチをつけるとすれば、解像度が高い分、やや自然味に欠ける。すなはち、デジタル臭さを嗅ぐというか、“作為的に加工された音”という印象は免れ難い。
なお、【ポタアン】ってなあ~に?で書いたとおり、ゼンハイザーはドイツ、シュアーはアメリカの会社に違いないが、多国籍企業が当たり前の今日、もうブランドで買う時代ではなくなっている。何故なら、IE80もSE535LTDも製品自体は“中国製”に過ぎないのですよ。
その【ポタアン】iBasso A01も実は“中国製”。自称の「保守派」には排外主義的傾向の強い人もいるが、そのご意見を受け容れたとして残るのは、SAEC社製シュアー用ケーブルだけ。あんまりじゃありませんか。
【ポタアン】も今や手放せない必須アイテムの一つです。シンプルな作りで音量つまみしか使ってなかったが、取扱説明書によると二つのゲイン(利得)スイッチが付いていて、四段階の切替が可能とある。IE80では、これを弄るとバランスが崩れて聴きづらいので、初期値のままにしてあった。だが、SE535LTDではGain2をONにして+3dBに上げるとちょうど良い。のっぺりした平面的な音が立体的になるようだ。
どうでもいいけど、SE535LTDの末尾についた“-J”とは、日本向け特別仕様ということなのかなあ。SHUREの本社(アメリカ)サイトで同製品を確認したところ、ケーブルがシルバー(白に近い)でなく“クロ”(ブラック)になってましたよ。つまらない駄洒落でした。
コメント