《キリストは死の縄目に繋がれたり》BWV4
復活節日曜日(第1祝日)用の曲だそうです。書簡章句は「コリント人への第一の手紙」、福音章句は「マルコ伝」から採られています。
【 解 説 】
宗教改革者マルティン・ルターのコラールが全節そのまま歌詞に採られ、厳粛で緊張感に溢れた音楽によって、復活と、その欠かせぬ前提である受難への考察を繰り広げる。
弦のシンフォニアによって導入される七つの楽章は、中世に由来を持つルターのコラール旋律の、多彩な変奏。その意味でこれは、リューネブルク時代に試みられたオルガン用コラール・パルティータに近い。
第二節における死の国、第三節における「死の死」、第四節における死と生命の争い、第五節における十字架の犠牲など、絵画的な描写も極めてリアルで精彩に富んでいる。
解説にもあるように、第2~8(終結)曲は、マルティン・ルター作曲の復活節コラール《 Christ lag in Todesbanden 》の変奏曲形式になっています。また、全曲はホ短調で統一されています。
第一曲目の短い(約100秒)シンフォニアがいい。「むかしむかし、あるところに・・・。」といった風情のもったいぶった荘重な開始が憎い。後に、シンフォニアの形式が組曲・劇音楽・歌劇等の「序曲」として発展したそうですから、さもありなんと思わせてくれるに充分です。
第二曲のコラール合唱歌い出しが、そのままこのカンタータの曲名です。これは、バッハのカンタータに共通する命名法ですね。バッハ自身が付けたものではないと思いますが、これが「伝統」なのでしょう。
様々な変奏を展開してきた旋律は、第八曲の終結コラールに至ってルターの原曲に回帰します。この演出(?)が実に堪らない。最後になって初めてお馴染みの旋律を聴くことになり、何だか妙な懐かしさを禁じ得ません。
【 歌詞対訳 】
☆ 第二曲 コラール合唱(四声部;ヴァイオリン、ヴィオラ、ツィンク、トロンボーン、通奏低音)
キリストは死の縄目に繋がれたり。
彼我等の罪を負いて渡されしなり。
されど主は甦り給いて、
我等に生命をもたらし給う。
そを我等喜ばん。
神を讃め、感謝しまつらん。
而して歌わん、ヤハの讃美を。
ハレルヤ!
Christ lag Todesbanden
Für unsre Sünd gegeben.
Er ist wieder erstanden
Und hat uns bracht das Leben.
Des wir sollen fröhlich sein,
Gott loben und ihm dankbar sein
Und singen Halleluja.
Halleluja!
☆ 第八曲 コラール(四声部;器楽全編成)
我等は喰らいて生命に歩まん、
まことの糧いれぬパンの供えられたれば、
古きパン種は
恵みの御言に混じ入るべからず。
キリストは己を生命のパンとなし、
独り魂をば養い給う。
信仰の生命、ただここにのみかかれり。
ハレルヤ!
Wir essen und leben wohl
Im rechten Osterfladen,
Der alte Sauerteig nicht soll
Sein bei dem, Wort der Gnaden,
Christus will die Koste sein
Und speisen die Seel allein,
Der Glaub will keins andern leben.
Halleluja!
CDは、昭和二五年モノラル録音(レーマン指揮)と昭和四三年ステレオ録音(リヒター指揮)を所有しており、どちらかといえばステレオ盤のほうが器楽伴奏がくっきり聴けてよい。
ありがとうございました。
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