《 第52話 》 「どくろの罠」
【 あらすじ 】 松田がお由の身元を調べている間に、柳木博士もお由のことを信用してしまう。そこに博士を銀座のキャバレーへと呼び出す月光仮面からの手紙が届く。それが本当に月光仮面のものか、それとも罠かと迷う博士。松田は祝に相談するよう勧める。
柳木博士邸応接間。
あや子 「お待ちどおさま。」
お由 「結構なお屋敷でございますねえ。こんな立派なお屋敷にお伺いしたのは初めてでございますよ。」
あや子 「(にっこりと)まあ。どうぞお掛けになって。」
お由 「はい、失礼致します。」
あや子 「あの、小母さんは、お子様はいらっしゃらないんですか?」
お由 「はい、あ、いえ。実は、男の子が二人おりましたが、戦争で死なせてしまいましてね。親孝行な子でございました。」
あや子 「まあ。戦争で・・。」
お由 「はい。二人とも南方で戦死致しました。尤も、御国のために働いてくれたんですから、あんまり愚痴はこぼせませんですがね。おかげで、この歳(55歳)になっても働かねばなりませんですよ。」
あや子 「お気の毒ねえ。」
お由 「いやあ、もう慣れました。長いこと独りぼっちでございますからねえ。」
あや子 「独りぽっち・・・。家はお父様と二人だけだけど、独りぽっちって、きっと寂しいわね。」
博士 「おお、だいぶ話が弾んでるようだね。」
あや子 「ええ、とっても好い方なんですのよ。」
博士 「ほほ。そうかい。」
お由 「あ~、何ですか世の中が悪くなりましたから・・。」
博士 「いやあ、全く。昨今は、人間の質が落ちましたからなあ。」
お由 「そうでございますとも。おっ、そう言えば、さっき門の所にお巡りさんが二人立っておりまして、私のことをいろいろ訊ねてましたが、何かあったんでございますか?」
あや子 「あら、ご存じなかったんですか?」
お由 「はっ?」
あや子 「小母さん、父のお仕事、紹介所でお聞きになってらっしゃったんでしょ。」
お由 「はあ、何でも偉い学者様だとか。旦那様は有名な御方だそうですねえ。」
博士 「ほっはっはっは。それほどでもないよ。あや子、この人はお前の言うとおりの人らしいね。」
あや子 「ええ。でしょ。」
お由がどくろ仮面一味であることを度外視すれば、見知らぬ他者から信用を獲得する know how が詰まっており、模範解答みたいですね。そういう意味で、どくろ仮面の探究心に感心するのであります。
どくろ仮面が「人心掌握術」の本を出版或いはHPで公開すれば、ベストセラー間違いなしですね。もちろん、冗談ですよ。
あくまで恭謙な態度で、お世辞を言ってまでも相手を気分よくさせ、かつ己の身の上については同情を誘う。これです、これ。世の中を威張って生きている人たちには、決して真似の出来ない難行苦行(?)でありましょうが。
コメントを投稿
コメントは記事の投稿者が承認してから表示されます。
アカウント情報
(名前とメールアドレスは必須です。メールアドレスは公開されません。)
コメント