朝鮮教育令
(明治四十四年八月二十四日勅令第二百二十九號)
第一章 綱 領
第一條 朝鮮ニ於ケル朝鮮人ノ教育ハ本令ニ依ル
第二條 教育ハ教育ニ關スル勅語ノ旨ニ基キ忠良ナル國民ヲ育成スルコトヲ本義トス
第三條 教育ハ時勢及民度ニ適合セシムルコトヲ期スヘシ
第四條 教育ハ之ヲ大別シテ普通教育、實業教育及専門教育トス
第五條 普通教育ハ普通ノ知識技能ヲ授ケ特ニ國民タルノ性格ヲ涵養シ國語ヲ普及スルコトヲ目的トス
第六條 實業教育ハ農業、商業、工業等ニ關スル知識技能ヲ授クルミトヲ目的トス
第七條 専門教育ハ高等ノ學術技藝ヲ授クルコトヲ目的トス
第二章 學 校
第八條 普通學校ハ兒童ニ國民教育ノ基礎タル普通教育ヲ爲ス所ニシテ身體ノ發達ニ留意シ國語ヲ教へ徳育ヲ施シ國民タルノ性格ヲ養成シ其ノ生活ニ必須ナル普通ノ知識技能ヲ授ク
第九條 普通學校の修業年限は四年トス但シ土地ノ状況ニ依リ一年ヲ短縮スルコトヲ得
第十条 普通學校ニ入學スルコトヲ得ル者ハ年齢八年以上ノ者トス
第十一条 高等普通學校ハ男子ニ高等教育ヲ爲ス所ニシテ常識ヲ養ヒ國民タルノ性格ヲ陶冶シ其ノ生活ニ有用ナル知識技能ヲ授ク
第十二條 高等普通學校ノ修業年限ハ四年トス
第十三條 高等普通學校ニ入學スルコトヲ得ル者ハ年齢十二年以上ニシテ修業年限四年ノ普通學校ヲ卒業シタル者又ハ之ト同等以上ノ學力ヲ有スル者トス
第十四條 官立高等普通學校ニハ師範科又ハ教員速成科ヲ置キ普通學校ノ教員タルヘキ者ニ必要ナル教育ヲ爲スコトヲ得
師範科ノ修業年限は一年教員速成科ノ修業年限ハ一年以内トス師範科ニ入學スルコトヲ得ル者ハ高等普通學校ヲ卒業シタル者トシ教員速成科ニ入學スルコトヲ得ル者ハ年齢十六年以上ニシテ高等普通學校第二學年ノ課程ヲ修了シタル者又ハ之ト同等以上ノ學力ヲ有スル者トス
第十五條 女子高等普通學校ハ女子ニ高等ノ普通教育ヲ爲ス所ニシテ婦徳ヲ養ヒ國民タルノ性格ヲ陶冶シ其ノ生活ニ有用ナル知識技能ヲ授ク
第十六條 女子高等普通學校ノ修業年限ハ三年トス
第十七條 女子高等普通學校ニ入學スルコトヲ得ル者ハ年齢十二年以上ニシテ修業年限四年ノ普通學校ヲ卒業シタル者又ハ之ト同等以上ノ學力ヲ有スル者トス
普通學校『國語讀本』巻六から幾つか拾ってみたいと思います。はじめに、この「教科書」の対象者や目的とするところが書かれた「緒言」を見てみましょう。
緒 言
一、本書ハ普通學校第三學年前半期ノ國語科教科書ニ充ツルモノナリ。
二、本書ニ於テハ、修業年限ヲ三箇年トセル普通學校ノ便宜ヲ計リ、前各巻ニ繼ギテ、歴史的事項・地理的事項等、各種ノ主要教材ヲ略々完結セシムルコトニ留意セリ。
三、本書ノ各課ハ、其ノ練習ト共ニ、凡ソ三四時間ヲ以テ教授スベキ豫定ナレドモ、教師ハ、便宜、斟酌ヲ加ヘ、生徒ノ能力ニ適セシメンコトヲ圖ルベシ。
四、本書ヲ教授スルニハ、國語ヲ以テ説明ヲ加ヘ、且ツ實物・動作・會畫等ヲ利用シ、生徒ヲシテ十分ニ其ノ意義ヲ理會セシメ、尚ホ言語或ハ文章ヲ以テ、明瞭ラ之ヲ表出セシムベシ。
五、本書ノ各課ヲ教授スルニハ、本文ノ讀方・解釋等ニ入ル前、必要ニ應ジテ該課ノ内容ニ關シ、豫メ國語ニテ問答又ハ説明ヲナスベシ。
六、新出語ハ總ベテ之ヲ上欄ニ掲ゲ、且ツ新出文字ニハ・點ヲ附シ、讀替文字ニハー線ヲ附セリ。
七、練習問題ハ、掲グルモノノ外、必要ニ應ジテ、之ヲ補フベシ。
八、教師ハ本書所載ノ言語ヲ授クルヲ以テ足レリトセズ、機ニ臨ンデ之ヲ補ヒ、生徒ノ語彙ヲ富マサンコトヲ務ムベシ。而シテ既ニ授ケタル言語ハ、爾後、絶エズ之ヲ使用セシムベシ。
九、巻末ノ附録ハ、生徒ヲシテ、豫習・復習ノ際、之ヲ利用セシムベシ。
大正三年十月 朝 鮮 總 督 府
朝鮮における当時の学制(普通学校)は、内地と違って八歳を以て就学年齢としていたため、本書は高等小學一年生用(現行学制では小學五年生用)相当の教科書ということになります。
また、國語(日本語)を学ばせるという第一義の他に、是非はともかく、ついでと言っては何ですが、日本の地理・歴史についても知らしめたい思いがありありですね。
なお、本来なら「歴史的仮名遣い」のはずが、そうなっていません。はじめ、引用元で置き換えたのかと思いましたが、先に採り上げた『日語讀本』に見られるとおり、そもそも教科書原本自体が、敢えて「歴史的仮名遣い」では書かれていないようです。贔屓目に見れば、日本語を母国語としない現地人への「配慮」なのでしょうかね。
ありがとうございました。
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