第二課 稻 刈
或ル日曜日ニ、太郎ハ父ニツイテ、稻刈ノ手傳ニ行キマシタ。田ハ稻カセヨク實ッテ、一面ニ黄色ニナッテ居マシタ。アチラデモ、コチラデモ、人々ガ忙シソウニ稻刈ヲシテ居マシタ。太郎モ、精出シテ、父ト共ニ稻ヲ刈リマシタガ、ヤガテ二人ハ田ノ畔ニ休ミマシタ。
シバラクシテ父ハ太郎ニ向ッテ、
「太郎、コウシテ稻ヲ刈ッテ、ソレカラドウシテ、米ヲ取ル
ノカ、オ前知ッテ居ルカ。」
ト尋ネマシタ。ケレドモ太郎ハソレヲヨク知リマセンデシタカラ、父ハ次ノ樣ニ話シテ聞カセマシタ。
「マズ、コウシテ稻ヲ刈ッテ、ソレヲ日ニ乾カスノダ。ソウ
シテ其ノ稻ガ乾イタ時ニ、稻扱器(イナゴキキ)デ實ヲ扱キ
落シテ籾ニスルノダ。其ノ籾ヲ摺臼(スリウス)デヒイテ、
唐箕(トウミ)カ箕(ミ)デアオッテ、籾殻ヲ去ルト、玄米
ニナル。玄米ニハマダ摺リ殘リノ籾ガマジッテ居ルカラ、之
ヲ萬石蓰(マンゴクトウシ)ニカケテエリ分ケルソレカラ
玄米ヲ臼デツイテ篩(フルイ)ニカケテヌカヲ去ルト、白米
ニナル。コレガ我々ノ食ベル米デアル。此ノ樣ニ稻カラ米ヲ
取ルノハ、其ノ骨折ガヨウイデナイ。」
太郎ハナルホドトサトッテ、其ノ時カラ粒デモ米ヲ粗末ニシナイヨウニナリマシタ。
・ 練習
一、稻刈ヲスル頃ノ農家ノ有樣ヲオ話シナサイ。
二、稻ヲ刈ッテカラ、白米ニスルマデノコトヲ文ニオ作リナサイ。
三、太郎ハ父ノ話ヲ聞イテ、ドウイウコトヲサトリマシタカ。
漢字交じり片仮名文は、慣れないせいか読み辛いですね。
天候や害虫に左右される米作りの苦労は、生産に携わった者でなければわからないのかもしれません。昔は学校に限らず、児童本などでも、よく「ご飯が食べられるようになるまで」といった表題で、田植えから母親のご飯炊きまでの過程が図解入りにされていたものです。
今でも田植えや稲刈りの体験学習機会があるようで、それはそれで良いこととは思います。しかし、昔はもっと日常的な行事(?)であり、わざわざそうした企画がなくとも、また農業と無縁の子でも、友達の家業を手伝うかたちで自然に体験していた気がします。「助け合い」の美風が意識せずとも色濃く残っていた昭和三十年代の話です。
ありがとうございました。
コメントを投稿
コメントは記事の投稿者が承認してから表示されます。
アカウント情報
(名前とメールアドレスは必須です。メールアドレスは公開されません。)
コメント