■ 第十三課 組 合
滋賀縣ニ葛川トイウ村ガアリマス。山ガ多クテ、田畑ガ少ナイノデ、村ノモノハ、大抵、炭燒ヤ木挽ヲ職業トシテ居マス。
シカシ皆ガ唯、伐ルバカリデ、植エナカッタカラ、山ノ木ハ次第ニ減ッテ行キマシタ。又、炭ノ賣捌ヤ日用品ノ買入レ等ニツイテモ、其ノ方法ヲ考エナカッタカラ、始終、損バカリシテ居マシタ。後ニハ其ノ日ノ暮シニモ困ルモノガ多クナッテ來テ、惡イ炭ヲ高ク賣ッテ、一時ノ利益ヲ得ヨウトスルモノモアルヨウニナリマシタ。ソレガタメ、サッパリ世間ノ信用ガナクナッテ、誰モ此ノ村ノ炭ヲ買ワナイヨウニナリ、非常ニ哀レナ有樣ニ陥リマシタ。
コレデハイカナイト、村ノ人々ガ相談シテ、明治三十七年九月ニ組合ヲ設ケテ、山林ノ保護、製炭ノ改良ヲハカリマシタガ、其ノ結果ガ頗ルヨカッタノデ、村民ハ始メテ組合ノ利益ヲ知リマシタ。ソレデ翌年三月ニハ、更ニ又、別ノ組合を設ケテ、村ノ生産品ノ共同販賣ト日用品ノ共同購入トヲ取扱ウヨウニシマシタ。
ソレカラハ炭ノ品質モ良クナリ、信用モ增シテ、前ヨリハ大層ヨク賣レルヨウニナッテ來マシタ。其ノ上、日用品ナドモ大變安ク買イ入レルコトガ、出來ルヨウニナリマシタカラ、村ノ人々ノ暮シモ、次第ニ樂ニナッテ來マシタ。
其ノ後、又、信用組合ヲモ設ケテ、産業ニ必要ナ資金ヲ融通スル方法ヲ立テマシタガ、遂ニ村ノ風俗マデモ、自然ニ改マルヨウニナリマシタ。
・ 練 習
一、葛川村ガ非常ニ哀レナ有樣ニナッタノハナゼデスカ。
二、葛川村デハドンナ組合ヲ設ケマシタカ。
三、後ニ葛川村ハドンナニナリマシタカ。ソレヲ文ニオ作リナサイ。
「組合」とあって「労働組合」のことかと思ったら、違いましたね。今でいう協同組合、或いは生活協同組合(生協)みたいなものでしょうか。
炭焼き、木挽(こびき)、木樵(きこり)などの言葉は、現在まったくといっていいほど使われません。現代っ子は、どんな職業なのか言い当てることが出来るのでしょうか。
つまらない話、炭としては備長炭が有名ですね。
焼き鳥も、ガスで焼いたものと備長炭によるものとは旨さが違います。同様に、煙草もライターで火をつけるより、燐寸を擦って点けたほうが美味しく感じるのは気のせいでしょうか。
こびき 【 木 挽 】
木材をのこぎりでひいて用材に仕立てること。
また、それを職業とする人。
きこり 【 木 樵 】
山林の木を切りだすこと。
また、それを職業とする人。そまびと。
びんちやうずみ 【 備長炭 】
和歌山県で産する良質の炭。ウバメガシを材料とし、火力が強く、炎も出ず、灰も少ない。元禄年間(1688~1704)に田辺の備中屋長左衛門(一説に備後屋長右衛門)が創製。
ありがとうございました。
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