■ 第二十四課 人の職業
世の中には官吏もあり、敎師もあり、又醫師などもあります。けれどもこれ等の職業ばかり貴いわけではなく、農業・工業・商業等も亦甚だ大切で、決して賤しむべきものではありません。近來、人々が農・工・商等の實業をも貴ぶようになったのは、喜ぶべきことです。
農業は、主として、米・麥・豆・粟等、種々の穀物を作るものです。穀物の作り方も、近頃は大いに改良されましたから、たヾ昔の通りにばかりして居てはいけません。殊に良い種子を選ぶことが大切です。惡い種子では、いくら骨を折っても、良い穀物が取れないし、収穫も多くありません。
此の外、農業には種々あります。野菜を作ったり、果樹を植えたり、家畜や家禽をかったりするのも、利益のあることです。
養蠶も亦利益の多いものですから、なるべく之をしなければなりません。
農事のひまひまに、筵を織ったり、繩をなったりすることは、副業といって、是れ亦、きわめて大切なことです。
家屋を建てたり、陶器や漆器を作ったり、反物を織ったり、紙をこしらえたりなどするのは、皆工業です。工業にも新しい方法が、段々行われるようになりましたから、たヾ昔の通りにばかりして居ては、良い品は出來ません。
商業は農業や工業で作った品物を買い取って、又それを賣って、利益を得るものです。商業にも色々あって、米屋もあれば雜貨屋もあり、魚屋もあれば呉服屋もあって、一々あげ盡すことは出來ません。又、國内で商賣するばかりでなく、外國と貿易するものもあります。
商人があちらの物を買っては、こちらに賣るから、人々が不自由をしないのです。
人は誰でも自分の職業を勵んで、家を富まし、國のためになるように、心がけなければなりません。
・ 練 習
一、職業にはどんなものがありますか。
二、農業はどんなことをするものですか。
三、商業はどんなことをするものですか。
四、工業はどんなことをするものですか。
五、此の地方に行われる農家の副業を言ってごらんなさい。
「職業に貴賤なし」との考え方に立脚するいかにも戦前らしい課目ですね。今でも同様の教育が行われているのでしょうが、むしろ自分で勝手に「序列」を決めて無理やり貴賤を作り出しているのではないか、という気さえします。
恥ずかしながら、当方の場合も、就職するにあたって金融業界だけには行きたくないと考えていました。他人のお金を預かって儲けるなんてとんでもないと思ったからです。
ところが、何の因果かその業界の一角、生保会社にお世話になるハメになってしまいました。しかし、人生何が幸いするかわかりません。一応は明治以来の伝統を誇る名の知れた大会社。辞めた今なお過分な退職年金を戴いており、おかげさまで金銭的には何の不自由もない毎日が過ごせます。
それにしても、生命保険は実に巧くできています。「一人が万人のために、万人が一人のために」とは保険制度を初めて日本に紹介した福沢諭吉の言葉ですが、まさに「世の中は助け合い」を実践する仕組みになっています。
昨今、3K(汚い、きつい、暗い)と呼ばれる職業が敬遠されて、不法滞在外国人の温床にもなっているようですが、物は考えようで、だからこそ職業的価値が上がるのではないでしょうか。これらの志望者は引っ張りだこだと思いますけどね。
便所掃除、倉庫管理・・・。やってみると愉しいものです。偉そうにアゴで人を使うような奴に限って、出来やしないんだから。
ありがとうございました。
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