昭和40年代以降、NHK大河ドラマは全く視てないが、武漢肺炎の時節柄、ヒマにあかせて約半世紀(50年)ぶりに『麒麟がくる』を録画している。良くも悪くも、モノクロ・スタンダード画面時代とは隔世の感がある。ロケセット・小道具や映像・音響技術等ハード面での進歩は著しいものの、ソフト面の軽視(頽廃)が酷い。これもグローバリズムの弊害か。「考えて(評価して)もらう」から「観せつける」へと変化しているようで、制作者の傲慢な態度が透けて見えて堪らなく厭になる。
制作スタッフ
・原作・脚本・・・池端俊策ほか
・音楽・・・ジョン・グラム(米国人)
・テーマ曲演奏・・・広上淳一指揮NHK交響楽団
・語り・・・市川海老蔵
・演出・・・藤並英樹ほか
キャスト(配役)
・明智光秀・・・長谷川博己
・妻 煕子・・・木村文乃
・母 牧・・・石川さゆり
・叔父 光安・・・西村まさ彦
・望月東庵(架空)・・・堺正章
・伊呂波太夫(架空)・・・尾野真千子
・駒(架空)・・・門脇麦
・菊丸(架空)・・・岡村隆史
・斎藤道三・・・本木雅弘
・土岐頼芸・・・尾美としのり
・織田信長・・・染谷将太
・妻 帰蝶(道三の娘)・・・川口春奈
・木下藤吉郎・・・佐々木蔵之介
・足利義輝・・・向井理
・細川晴元・・・国広富之
・摂津晴門・・・片岡鶴太郎
・正親町天皇・・・坂東玉三郎(五代目)
・今川義元・・・片岡愛之助
・太原雪斎・・・伊吹吾郎
・徳川家康・・・風間俊介
・武田信玄・・・石橋凌
[麒麟がくる] オープニング映像 | タイトルバック | 音楽 ジョン・グラム | NHK
人間が空を飛んだり、歴史劇にそぐわないパステルカラーの派手な色彩が痛い。シュール(超現実的)な物語構成は、韓・華流時代劇と大差ないというか、瓜二つである。もともとドラマ(作り話)だから、必ずしも史実に沿う必要はないまでも、荒唐無稽な作風は勘弁願いたい。
出演者も世代交代が進んで、知ってるのは石川さゆり、堺正章、本木雅弘、尾美としのり、国広富之、片岡鶴太郎、伊吹吾郎ら脇役陣のみ。このうち前三者は、役者でなく歌手としてである。モノクロ時代の初期作品(例;赤穂浪士、太閤記、源義経など)と比べると、伝統的な我国固有の精神より現代的感覚(価値観)に比重があり、それはそれで別の意味での面白さが味わえる。逆にいただけないのが、如何にも「演技」させられている風情の気のないセリフ回しや間延びした演技。創成期にはもっと緊迫感やスピード感があった気がする。第一、西洋(長身)化した役者の体形に着物姿が似合わないし、野良着(作務衣)さえピカピカの絹製新品といった有り様ではシラケてしまう。何もかもがバーチャル(仮想)そのものであって、現実味に乏しい。ひと言でいうと、生活臭がまるでないのだ。これではドラマに吸い寄せられないのも無理はない。制作者と視聴者(おのれ自身)の思惑が乖離しているからだろう。
いずれにしても、モノクロ時代が懐かしい。
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