外出自粛が延長されて、ヒマなこと夥しい。もともと”出不精”なほうだけど、御時勢により恒例のタイ旅行などもってのほか。今や日タイ間の飛行機さえ全便欠航に等しい。当然ながら行きたくても物理的に叶わないのが現状である。仕方ないから、録り貯めたTV録画を引っ張り出して毎日視ている。なかには録画しただけで、一度も視てなかった作品もある。
『ぶらり信兵衛道場破り』(フジTV/1973年/全50話)も、数話分視ただけで長らくオクラ入りしていた。国内ドラマの便利な点は、概ね一話完結方式なので、好みの話の”つまみ視聴”が可能なこと。連続ドラマだと、そうは問屋が卸さない。第一話から通して視ないと、物語そのものがチンプンカンプンになって意味を成さない。
☆ ぶらり信兵衛道場破り ☆
・原作;山本周五郎『人情裏長屋』より
・音楽;渡辺兵夫
主要配役
・松村信兵衛(素浪人) - 高橋英樹
・こふね(深川芸者) - 浜木綿子
・重助(屋台そば屋) - 大宮敏充(第1話 - 第21話)→藤原釜足(第27話 -)
・駕籠かきの金太 - 柳沢真一(現:柳澤愼一)
・同・銀太 - 渡辺篤史
・以三(岡っ引) - 深江章喜
・おぶん(重助孫娘) - 武原英子(第1話 - 第26話)→葉山葉子(第27話 -)
・おきみ(居酒屋『丸源』店員/こふね妹) - 紅景子
・乙吉(大工) - 小島三児
・おまさ(乙吉女房) - 有崎由見子
・平七(長屋差配) - 木田三千雄
・おあき(平七女房) - 新山真弓
・源次(居酒屋『丸源』主人) - 東京二
・竜二(同店員) - 東京太
・平八(質屋/長屋オーナー) - 山村弘三
・鶴之助(信兵衛が養育する夜逃げ浪人の子) - 上屋健一
主題歌『信兵衛長屋』-歌/ボニージャックス
TVドラマの評論は、映像がないと理解し難いが、この主題歌には登場人物が歌いこまれているので、一助にはなるだろう。肝腎の内容だが、原題『人情裏長屋』が示すとおり、基本的には「人情噺」になっている。したがって、お涙頂戴式の浪花節・浄瑠璃調になりがちだが、喜劇仕立てなので、むしろ落語のそれに近い。根柢に「笑い」があるから、視ていて心が和む。テレビ黄金期に流行った、善人も悪人も賢人も愚人も出て来なくて凡人ばかりだからこそ、誰もが我が事のように愉しめる、典型的なホームドラマの時代劇版である。時節柄(武漢ウイルス禍)、こういう騒々しいほど活気に溢れた明朗な番組が一番いい。ただし、完成度は必ずしも高くない。お約束のお笑い劇中劇や取って付けたような道場破りシーンでのおふざけギャグは、却って原作(未読だが)本来の格調を汚している気がする。
なお、同じ小説を原作とする『子連れ信兵衛』(NHK/2015年)も所有している。しかし、ハイビジョン映像など、技術的進歩は認めるものの、懐古風な手法が逆に現実味を遠ざけており、無用の作為(制作者の意図)が透けて見える凡作。何より能面みたいに表情のない演技と気のない棒読みセリフが気持ち悪い。自分より一・二世代下の知らない出演者ばかりであることと相俟って、はっきり言って、視るのがイヤになるほど酷い。
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