前稿で嵐寬寿郞(通称「アラカン」)の名前が挙がった。しかし、右門役より鞍馬天狗役で映画俳優として世に知られるようになった人である。そんなわけで急に大佛次郎の時代小説『鞍馬天狗』のことを思い出した。それも、当該小説や映画を未だ読んだり観たりしない子供の頃から、「アラカン」と「鞍馬天狗」はセットになってよく憶えている。
同著者に成るもう一つの有名小説『赤穂浪士』に比べると、『鞍馬天狗』のほうがよほど子供向けの印象が強い。児童向け月刊誌『少年倶楽部』(大正3年-昭和37年)にも連載されていたせいかもしれない。といっても、概ね戦前(昭和2~11年)の話だから、生まれる前のこととてリアルタイムで読めるはずもない。実はこの『少年倶楽部』、調べてみたらなかなか興味深いことが判った。
・神州天馬侠(大正14年)・・・吉川英治作/山口将吉画
・豹の眼(昭和2年)・・・高垣眸作/伊藤彦造画
・角兵衛獅子(昭和2年)『鞍馬天狗』・・・大佛次郎作/伊藤彦造画
・あゝ玉杯に花うけて(昭和2年)・・・佐藤紅緑作/斎藤五百枝画
・敵中横断三百里(昭和5年)・・・山中峯太郎作/樺島勝一画
・快傑黒頭巾(昭和10年)・・・高垣眸作/伊藤幾久造画
・怪人二十面相(昭和11年)・・・江戸川乱歩作/小林秀恒画
・少年探偵団(昭和12年)・・・江戸川乱歩作/梁川剛一画
・のらくろ(昭和6年)・・・田河水泡(漫画)
・冒険ダン吉(昭和8年)・・・島田啓三(漫画)
・日の丸旗之助(昭和10年)・・・中嶋菊夫(漫画)
・よたろうくん(昭和31年)・・・山根赤鬼(漫画)
・月光仮面(昭和33年)・・・川口庚範作/桑田次郎画
・ロボット三等兵(昭和33年)・・・前谷惟光(漫画)
・豹の眼(昭和34年)・・・高垣眸作/たつみ勝丸画 漫画にリメイク
映画・TV劇制作の対象となった小説・漫画がズラリ並ぶ。リアルタイムで見た(読んだ)のは『よたろうくん』以降だが、戦前の作品であれおおかた知っている。ということは、戦後も復刻版が出回っていたのだろう。懐かしいなぁ『ロボット三等兵』。小学校卒業文集「記念の落書きコーナー」に出演(?)させたほど入れ込んでいたのですよ。
本題に戻そう。
TV版『鞍馬天狗』
01.市川高麗蔵主演(昭和31年;KR=TV)
02.嵐寬寿郎主演(昭和34年;フジテレ)
03.市川団子主演全49回(昭和35年;KR-TV)
04.中村竹弥主演(昭和38年;TBS)
05.大瀬康一主演全84回(昭和44年;毎日放送)
06.高橋英樹主演(昭和44年;NHK
07.★竹脇無我主演全26回(昭和49年;日テレ)
08.草刈正雄主演全13回(昭和56年;TBS)
09.中井貴一主演単発(昭和64年;フジテレ)
10.目黒祐樹主演全51回(平成3年;テレ東)
11.松平健主演単発(平成13年;フジテレ)
12.野村萬斎全8回(平成18年;NHK大阪)
所有しているのは「07」のみ。だが、リアルタイムで視たわけでなし、懐かしさもヘチマもない。どうも『鞍馬天狗』のイメージじゃなく、録り貯めただけで視もせずオクラ入りしている。「01」は我家に未だテレビがなかった時分ゆゑ視た憶えはないものの、なぜか主題歌だけは耳に残っている。KR-TV(現TBS)はもともとラジオ東京(JOKR)が母体なので、『赤胴鈴之助』と同様に、テレビとラジオの同時放送だったのかも知れない。
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