未だ衛星放送やUHFローカル局がなかった昭和30年代の昔、地上波(VHF)民放キー局にはそれぞれ特色があって、それがキャッチフレーズにもなっていた。例えば「ドラマのTBS」「時代劇はNET」など。
もちろん、各局とも全ジャンルを放送する総合放送局だったわけだが、他系列との違いを強調し、差別化の狙いがあったものと思われる。当時の私奴など、それに釣られて視ていた気もする。目下、BS.・CS局などで再放送されている昔のドラマ(含;一部のバラエティ番組)を録画保存しているが、図らずも「ドラマ(現代劇)」ではTBS系、「時代劇」はNET系が多いようだから満更デタラメでもあるまい。
おっと、そんなことが書きたいわけではなかった。録り貯めたドラマの特徴として、現代劇なら「刑事物」、時代劇は「捕物」が多い、ということ。「刑事物」「捕物」ともあまり好きなカテゴリーではないだけに意外であった。原作となったこの種の小説は昔から夥しい数に上るから、我々は【犯人(下手人)捜し】が大好きなのだろう。代表的な時代小説に限っても、次のとおり再三再四リメイクされている。これに映画化作品を含めれば数え切れないほどになる。
・半七捕物帳(岡本綺堂;大正6年)
中村竹弥主演KR-TV版(昭和31年)
平幹二朗主演NET版(昭和47年)
尾上菊五郎主演テレ朝版(昭和54年)
里見浩太朗主演日テレ版(平成4年)など
・右門捕物帖(佐々木味津三;昭和3年)
中村竹弥主演KR-TV版(昭和32年)
黒川弥太郎主演関西テレ版(昭和37年)
中村吉右衛門主演日テレ版(昭和44年)
杉良太郎主演NET版(昭和49年)
杉良太郎主演日テレ版(昭和57年)など
・銭形平次捕物控(野村胡堂;昭和6年)
若山富三郎主演KR-TV版(昭和33年)
安井昌二主演TBS版(昭和37年)
大川橋蔵主演フジテレ版(昭和41年)
風間杜夫主演日テレ版(昭和62年)
北大路欣也主演フジテレ版(平成3年)
村上正明主演テレ朝版(平成16年)など
・伝七捕物帳(陣出達朗;昭和26年)
高田浩吉主演朝日放送版(昭和43年)
中村梅之助主演日テレ版(昭和48年)
中村梅之助主演テレ朝版(昭和54年)など
・若さま侍捕物手帖(城昌幸;昭和14年)
夏目俊二主演関西テレ版(昭和34年)
市川新之助主演日テレ版(昭和42年)
林与一主演関西テレ版(昭和48年)
田村正和主演テレ朝版(昭和53年)
東山紀之主演テレ朝版(平成3年)など
・人形佐七捕物帳(横溝正史;昭和13年)
松方弘樹主演NHK版(昭和40年)
林与一主演NET版(昭和46年)
松方弘樹主演テレ朝版(昭和52年)など
・鬼平犯科帳(池波正太郎;昭和42年)
松本幸四郎主演NET版(昭和44年)
丹波哲郎主演NET版(昭和50年)
萬屋錦之介主演テレ朝版(昭和55年)
中村吉右衛門主演フジテレ版(平成元年)
このうち林与一版『人形佐七-』を目下録画中なれど、ほかの「捕物」とは一線を画して推理部分がかなり多くなっている。原作がそうなのか好色で遊び好きかつ恐妻家、オマケに失敗もする人間味溢れる主人公(佐七)が異色のキャラクターで大いに気に入っている。なお主題歌『江戸っ子佐七』を歌う美空ひばりは、プロズレした歌い崩しが尋常でなく、耳を覆いたくなるほど酷い。そこへ行くとエンディングテーマ『人形佐七』を歌う村田英雄はさすがである。堂々とした歌いっぷりがオッチョコチョイな主人公の欠点を補って余りある。
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