このところ、映画・TVドラマばかりの話題が先行しているけれど、趣味の一つであるオーディオに興味を失くしたわけではない。現に昨年暮れ、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)とヘッドホン(HP)を買い換えた。何か不満があったり壊れたわけでもないのにだ。かつ音源自体が99%アナログ時代モノとあっては、音質向上など望むべくもない。それでも物欲が止まらず、新製品が欲しくなるから不思議である。とかくオーディオ趣味は、カネがかかり過ぎて仕方がない。
買い換えたのは次のとおり。
*DAP ・・・ ソニー NW-A16 → 同 NW-A35
・買い換え理由 ・・・ 音質向上とタッチ操作が可能になった。
*HP ・・・ ゼンハイザー MOMENTUM → 同 MOMENTUM On-Ear Wireless
・買い換え理由 ・・・ 無線(有線でも可)かつ折り畳み出来て旅行に便利。
宣伝文句に巧く乗せられて買ってしまったわけだが、実際に使用してみて判ったことは、以下の事柄である。
*NW-A35
・思ったより画面が小さく、ミスタッチ続出で上手く操作できない。
・もっさりしていて、タッチ操作後次画面表示まで時間がかかりすぎ。
・タイ文字が表示されなくなった。
*MOMENTUM On-Ear Wireless
・耳乗せタイプのため装着感が今イチ。
・ドンシャリ気味の派手な音出しでクラシック音楽に向かない。
・左右に音が拡がりすぎて不自然。
・奥行きのない平面的な音場で音に深みが感じられない。
・所有ポータブルヘッドホンアンプが使えない。(有線使用なら可)
上述の如く不満を捜せばキリがないものの、DAPの音質は確実に進化している。ヘッドホンアンプなどかまさなくとも、本体直挿しで充分鑑賞に堪えうる性能になった。事実、日常的には無印MOMENTUMをNW-A35に直挿しで聴いている。
話変わって、MOMENTUM On-Ear Wirelessのエージング(鳴らし運転?)のため、改めて「昭和の歌謡曲」を戦前から通して聴いてみた。いやあ、好いですね、特に昭和34年頃までのSP盤時代に成る歌。日本の(いや誤解を避ける意味で「我が」と一人称に置き換えよう)【原風景】がそこにある。【浪花節的(泣かせる)歌謡曲】全盛だった当時を偲ばせてくれる。単に[惚れた晴れた]だけの当世J-ポップスと違って、相互扶助を旨とする共同体(ゲマインシャフト)の名残を留めた【旧き佳き日本】に浸ることが出来る。
例えば伊藤久男『忘れ得ぬ人』(昭和29年)、コロムビア・ローズ『哀愁日記』(昭和29年)、松島詩子『喫茶店の片隅で』(昭和30年)など。何れも有り触れた恋歌に相異ないのだが、今時の歌と決定的に違うのは、「耐え忍ぶ恋」ないし「叶わぬ恋」になっているということ。伝統的な和楽器は用いられておらず、『喫茶店-』などむしろ仏国シャンソン風でさえある。にも拘わらず涙を誘うのは、歌詞が効いているからだろう。当時は小学校低学年だったゆゑ、歌詞の意味など解ろうはずもない。実際、流行り歌の一つぐらいの認識しかなかった。
しかし、年齢を重ねる毎に歌詞の意味が理解できるようになればなるほど涙なしに聴くこと能わず。後年、ステレオ再録音盤や別歌手による懐メロ盤も数多い。けれでも当時を偲ぶには、レコードが「音の缶詰」である以上、断じてオリジナル音源でなければならぬ。
☆ 松島詩子『喫茶店の片隅で』(昭和30年) ☆
作詞;矢野亮、作曲;中野忠晴
コメント