クラシック音楽家の映画音楽となれば、芥川也寸志を逸するわけにはいかない。といっても、映画音楽ましてや本業の古典音楽作品など殆ど知らなかった。それでも文豪芥川龍之介の三男坊であり、テレビにもちょくちょく顔を出していたことから、それなりの知名度があったことだけは確か。彼の音楽に関心が向いたきっかけは、NHK大河ドラマ『赤穂浪士』(昭和39年)を視て、そのテーマ曲に魅せられたから。
NHK大河ドラマ『赤穂浪士』のテーマ曲
作曲;芥川也寸志、演奏;コンセール・レニエ
聴いてるだけで泣けてくる。これぞまさしく「浪花節的(泣かせる)」音階なのである。調べてみると、橋本國彦、下総皖一の弟子でもあったとか。ところが、小中学生時分の唱歌課目は、お点が芳しくなかったらしい。戦時中は陸軍戸山学校軍楽隊でテナーサックスを担当、戦後伊福部昭に師事、谷口千吉監督『銀嶺の果て』(音楽;伊福部昭)ではピアノパートを担当しているそうな。
芥川也寸志の手になる映画音楽のうち、保有作品は次のとおり。
・若い人(昭和27年;東宝)
市川崑監督、出演;池部良、久慈あさみ、島崎雪子、杉村春子
・地獄門(昭和28年;大映)
衣笠貞之助監督、出演;長谷川一夫、京マチ子、黒川弥太郎、山形勲
・サラリーマン目白三平(昭和30年;東映)
千葉泰樹監督、出演;笠智衆、望月優子、小林圭樹、沢村貞子、東千代之介
・続サラリーマン目白三平(昭和30年;東映)
千葉泰樹監督、出演;笠智衆、望月優子、小林圭樹、飯田蝶子、浅野進治郞
・黄色いからす(昭和32年;松竹)
五所平之助監督、出演;淡島千景、伊藤雄之助、設楽幸嗣、田中絹代、久我美子
・裸の太陽(昭和33年;東映)
屋城巳代治監督、出演;江原真二郎、丘さとみ、中原ひとみ、仲代達矢
・おとうと(昭和35年;大映)
市川崑監督、出演;岸恵子、川口浩、田中絹代、森雅之
・黒い十人の女(昭和36年;大映)
市川崑監督、出演;船越英二、岸恵子、山本富士子、宮城まり子、中村玉緒
・私は二歳(昭和37年;大映)
市川崑監督、出演;船越英二、山本富士子、浦辺粂子、渡辺美佐子、京塚昌子
・太平洋ひとりぼっち(昭和38年;日活)
市川崑監督、出演;石原裕次郎、森雅之、田中絹代、浅丘ルリ子、ハナ肇
・八甲田山(昭和52年;東宝)
森谷司郎監督、出演;島田正吾、大滝秀治、高倉健、丹波哲郎、栗原小巻
・八つ墓村(昭和52年;松竹)
野村芳太郎監督、出演;渥美清、萩原健一、小川真由美、山崎努、山本陽子
直ぐにメロディが頭を巡るほど印象に残っている作品は、意外にないなぁ。『黄色いからす』なんか、劇場で子供の頃観た憶えがあるが、それこそ「黄色いからす」のパステル画映像が強烈な記憶として残っているものの、音楽となるとまったく思い浮かばない。それだけ、日々の暮らしに溶け込んだ音楽と言えなくもないが・・・。
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