一時期、クラシック音楽関連で邦人作曲家のCDを買い漁ったことがある。ただし、おのれの若年期に於けるそれら作曲家たちは、おおむね現役として活動中だったわけで、クラシック(古典)というよりむしろ現代音楽・前衛音楽的認識であった。だから、学生時分に聴いた印象では、晦渋・難解としか映らなかった。ところが今になって改めて聴き直してみると、なかなか好いじゃありませんか。まぁ、ストラヴィンスキー(露→米)、シベリウス(フィンランド)、ショスタコーヴィチ(ソ連)らだってまだ存命だったのだから当たり前か。彼ら著名欧米作曲家より、同じ日本人である邦人作曲家の作品の方がむしろ共鳴できる部分が多い。
集めたCD中、『山田耕筰の遺産』全14巻の企画物があって、その内「第9巻-映画音楽、その他編」と「第10巻-管弦楽曲編」の二枚を所有している。しかしほとんどの曲は、ネット上に音源が見あたらないので、聴いていただけないのが残念だが、曲目リストを載せておこう。
01.北進日本の歌(映画『北進日本』)
02.悲しき西風(映画『新しき土』)
03.なげき(映画『新しき土』)
04.青い空見りゃ(映画『新しき土』)
05.野の花よりも(映画『新しき土』)
06.野武士の歌(映画『戦国群盗伝』)
07.恋い渡る(映画『戦国群盗伝』)
08.若人の歌(映画『国民の誓い』)
09.オリムピックの歌(映画『国民の誓い』)
10.アルプス槍騎隊(映画『アルプス槍騎隊』)
11.君待つ窓辺(映画『アルプス槍騎隊』)
12.燃ゆる大空(映画『燃ゆる大空』)
13.女の旅唄(映画『川中島合戦』)
14.千曲の朝霧(映画『川中島合戦』)
15.明けゆく空(青年の歌)
16.東京市民歌
17.東京市童謡
18.空は青雲
19.輝く朝
20.全女性進出行進曲
21.霊峰富士
22.霊峰富士
23.健康歌
24.全国中等学校優勝野球大会の歌
25.航空唱歌(東京より大阪まで)
全て戦前曲なので知ってる曲は少ない。それでも、日独合作映画『新しき土』(ドイツ公開版)のDVDを持っているので02~05、それに08,12,24は聴き憶えがある。
12.燃ゆる大空 by 霧島昇、藤山一郎
今でも高校野球全国大会(甲子園)の入場行進曲に使われている「24.全国中等学校優勝野球大会の歌」について。曲名の通り“歌”なのに吹奏楽で奏されるだけで、なぜか一度も歌われたことがないらしい。幸いにも所有するCD盤は内本実が歌っており、正真正銘のオリジナル盤である。ただ、戦時色の強い頃に作曲されているだけに、好戦的で決してお上品な曲とは言い難い。それゆゑ、戦後のメルヘンチックな教育下では当然のようにNGとなったのだろう。
*ご参考*全国高等学校野球選手権大会行進曲
01.交響曲《明治頌歌》
山田耕筰指揮ベルリンフィル
02.交声詩曲《大陸の黎明》
山田耕筰指揮日本放送交響楽団
03.寿式三番叟の印象による組曲風の祝典曲
山田耕筰指揮東京交響楽団
04.「幼き日」山田耕筰童謡曲集
山田耕筰指揮日本コロムビア交響楽団
曲が曲だから、一つとしてネット上に音源が見あたらなかった。けれども、みんな好いですよ。特に《明治頌歌》なんて、フルトヴェングラー時代のベルリンフィルが、クレジットがなければ邦人オーケストラと間違えるくらい日本的な響きを奏でているから驚き。さすがは名門オーケストラである。前稿でバッハのカンタータ(交声曲)を記事にしたが、山田耕筰にもカンタータ曲があるんですね、その名も《大陸の黎明(「しののめ」と読ませるらしい)》。バッハに限らず、カンタータ曲ファンには堪らない。
実は我が母校校歌も山田耕筰の筆に成るのですよ(作詞;サトウハチロー)。せっかくですから聴いてみてください。
千葉県立船橋高等学校 校歌
このYouTube版もトチッてるけど、歌い出しを合わせるのが難しいんですよね。これはピアノ伴奏版だが、我が在校時代(昭和38~41年)からオーケストラ部があった。ピアノ伴奏よりオーケストラ伴奏で歌うほうが、高揚感が弥増しますですよ。特に前奏部が素晴らしく、ティンパニーまで入ってきてまるでオラトリオ(聖譚曲)でも始まるみたいに希有壮大なスケール感を味わえる。関係ないけど戦前は男子校だったので、在校時男女比8:2くらいだったが、今はどうなのだろう。
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