前稿では、真空管PHPA(ポータブルヘッドホンアンプ)について書いた。エージングが効いてきて、いよいよ本格的に実力を発揮しつつある。と言いたいところだが、何気なくWALKMANにイヤホン直挿しで聴いてみたら、このほうが音がよかったりして・・・。
“よい音”と信じ込んで聴いているから、心理的効果が絶大だったのだろう。ただ、このポタアン(CarotOne Fabriziolo Ex)を介すことにより、雑味がとれて澄んだ音色になることだけは確か。「ポタアン」といっても、充電池仕様と違ってAC電源必須なので、屋外用途は無理。それを承知のうえで、“室内装飾品”的興味から購入した次第。
ところで、DENONの音聴箱GP-S30から移し録った音楽ファイルは、「懐メロ」ばかり。おおかたCD化されているクラシック音楽まで、デジタル化する発想がなかった。ところが、有名どころの演奏なら幾らでもCDになって再発売されているが、マイナーな曲や演奏の場合、未CD化或いはあっても廃盤になってることが多い。
例えばロバート・アーヴィング指揮フィルハーモニア管『コッペリア/シルヴィア/レ・シルフィード(風の精)』(東芝EMI EAC-30095)は、レコードと同じ腹合せのCD盤は未発売。目的の「レ・シルフィード」だけならCD化されているものの、廃盤もしくは入手困難なありさま。どうでもいいけどこのレコード、中古品でUS$17.99-(¥2,141-)のプレミアがついてますな。購入当時(おそらく昭和50年代前半)、僅か¥1,300-の廉価版でしたけどね。
どんな演奏かサワリを聴いてみよう。
Chopin Les Sylphides-Prelude in A Major
by Robert Irving/Philharmonia Orchestra
ざっと、こんな感じです。どちらかというと、大真面目なクラシック音楽というより、エンターテーメント(娯楽)に徹した愉しい「憩いの音楽」といったところか。せっかくだから、現物レコードを引っ張り出して「音聴箱(おとぎばこ)」にかけてパソコンに取り込んでみた。但し、何かの設定が間違っているせいか、実際に聴いていた頃の「音」ではなく、かなり甲高く聞こえる。
買ってもう四十年近く経つのに、特に盤面が傷んでいるわけでもなく、再生装置さえあればちゃんと聴けることを確認できただけでも感動ものである。これからヒマなとき、ちょくちょくレコードを鑑賞することにしよう。同じ音源でもレコードからデジタル(CD)化されたものは硬く響く。それが“冷たさ”の所以かもしれない。そこへゆくと、アナログレコードは遙かに柔らかい響きゆゑ、人間的な“温かさ”を感じる。
そうしたこともあってか、今や世界的なアナログブームなのだそうだ。それも、我々のような“真空管時代”を経てきた懐古派ロートルばかりでなく、未知の若者世代にも人気があるらしい。事実、このたび買ったイタリアの真空管PHPA制作者も実は四十代。したがって、単に“真空管時代への回帰”と見誤ると面食らう。そこには「新たな創造」が加えられているからだ。
そんな折、販売形態が激変して暫時撤退状態だったHMV渋谷店が新装開店する(した?)らしい。品揃えは、時流に逆行してCDよりアナログレコードが主体だとか。いや待てよ。“時流に逆行”なんかでなく、むしろ“時代の先取り”なのかもしれませんね。
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