☆ まず、勇気を以て着手せよ
彌三郎へ色紙を書かせ、「紙一ぱいに一字書くと思ひ、紙を書き破ると思ふて書くべし。よしあしはそれしやの仕事なり。武士はあぐまぬ一種にて濟むなり」とて染筆なり。
【 訳 】
弥三郎に色紙を書かせるとき、「紙いっぱいに一字だけ書くのだと思い、紙を書き破るつもりで書くがいい。出来、不出来は、その気力があるかないかにかかっている。だいたい武士というものは気力が第一で、事を成就できず、疲れて厭になるようなことさえなければ、それでいいのだ。」と言われて、色紙を書かせられた。
弥三郎という人がどのような人物かわかりませんが、武士の子供なのでしょうね。色紙を書かせたのは山本常朝でしょうか。
自分は字が下手で、小学校低学年の時、こともあろうに習字教室に通わされていました。かなりご高齢の優しい先生(男)でしたから、叱られたりはしませんでしたが、ちっとも上達せず才能がないのを見限って自分のほうから放り投げてしまいました。
ここに書かれているように、気力が足りなかったのでしょうね。字が上手な友人を羨ましく思いましたが、だからといって肝心要の自分自身が上手になりたいという意欲がまるでありませんでした。おかげで、未だに毛筆はおろかペン字もダメですね。まさに、ワープロ様々です。
そう言えば、我が師も、同じようなことを仰ってたような気もします。とにかく紙一面を使って雄々しく書きなさい、と。その昔、書かれた文字の形状で性格判断するのが流行ったように記憶しますが、あながちマト外れではないような気がします。
そんなわけで、標題の「まず、勇気を以て着手せよ。」と「習字」とが結びつけられたのかもしれませんね。もちろん、標題そのものは「葉隠」の著者がつけたものではありませんが。
ありがとうございました。
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