■ 第七課 世界(一)
或ル時、先生ガ生徒ニイロイロ地理ノ話ヲシテ、聞カセテ居ラレマスト、一人ノ生徒ガ先生ニ向ツテ、
「先生、私ドモノ住ンデ居ル世界ハ地球ト云ツテ、大キナ
圓イ球ダト云フコトデスガ、ドウシテ其ノ圓イコトガ分リ
マスカ。」
ト尋ネマシタ。
先生 「ソレハヨイ問デアル。地球ノ圓イコトハ、世界ヲ一周
スレバ分ル。今日デハ、世界ヲ一周スルノハマコトニタヤ
スイ。僅カニ四十日モカヽレバ一周サレル。
我々ハ汽車ニ乘ツタリ、汽船ニ乘ツタリシテ、西ヘ西ヘ
ト進メバ、マタモトノトコロニ歸ツテ來ル。或ハ東ヘ東ヘ
ト進ンデモ、同ジコトデアル。コレハ地球ノ圓イ證據デア
ル。若シ地球ガ平タイモノナラバ、行ケバ行クホド、遠ク
ヘ行ツテシマツテ、マタモトノ地ニ來ナイ筈デアル。」
生徒等ハ皆先生ノ話ヲ尤モダト思ヒマシタ。
又、他ノ生徒ガ先生ニ尋ネマシタ。
「僅カ四十日位デ廻ラレルナラバ、世界ハ思ツタヨリモ
小サナ物ノヤウデスガ、一體ドノ位アルノデセウカ。」
先生 「地球ノ直徑ハ凡ソ三千二百里デ、其ノ面積ハ凡ソ三千
三百萬方里アル。決シテ小サナモノデハナイ。皆サンハ、
我ガ日本ノ面積ハドノ位アルカ、知ツテ居マスカ。」
生徒 「ソレハイツカ先生ニ教ヘテ戴イタカラ、覺エテ居マス。
タシカ四萬三千方里デアリマシタ。」
先生 「サウダ。四萬三千方里ダ。能ク覺エテ居マシタ。世界
ノ面積ニクラベレバ、マコトニ小サイケレドモ、一ツノ國
トシテハ、決シテ小サナモノデハナイ。世界ニハ我ガ國ヨ
リ小サナ國ガイクツモアル。勿論、我日本ヨリ大キナ國モ
アルガ、國ハタヾ大キイバカリデハダメダ。ソレハ皆サンニ
モ分リマセウ。」
生徒 「ハイ、分リマス。大キクテモ、盛ンデナイ國モアリマス。」
先生 「サウダ。大キイバカリデハイカヌ。第一大切ナコトハ、
國民ガ忠良デ、ハタラキノアル人ニナルコトダ。皆サンモ
常ニ之ヲ忘レナイデ、我ガ日本國ヲ益ヽ盛ンニスルヤウニ、
心掛ケナケレバナリマセンゾ。」
・ 練 習
一、世界ノ圓イコトヲ文ニオ作リナサイ。
二、地球ノ直徑及ビ面積ハ、凡ソ何程アリマスカ。
三、我ガ日本ノ面積ハ何程アリマスカ。
四、國ヲ盛ンニスルニ、第一大切ナコトハ何デスカ。
今度は世界地理のお授業。地球は「丸い」と言わず、「円い」が正しいのでしょうか。確かに、「地球の円周」などの用例があります。
この頃の世界一周は四十日もかかったのですね。乗り物は客船や汽車が主流だったのでしょうか。まさか、馬や駕籠ではないでしょう。そう言えば、「八十日間世界一周」(昭和31年)という映画がありました。原作はジュール・ベルヌの空想科学小説(明治四年)とのことですが、映画では気球も使っていたような気がします。
ウィキペディアの「八十日間世界一周」
今は飛行機で倫敦~東京間約11時間半、東京~紐育間約12時間半、紐育~倫敦間が何時間か知りませんが、一日半もあれば世界一周できるようです。
日本の領土面積が四万三千方里と先生が仰ってます。え~と、一里は約4キロだから、43000×4×4=68万8千平方キロでいいのかな。メートル法になって換算がややこしいですね。ただでさえ計算が苦手なのに。
今日、国土面積は約38万平方キロとされますから、戦前の約半分になってしまいましたね。この中に北方四島は入っているのでしょうか。
ありがとうございました。
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