■ 第十一課 會社と銀行
會社は人々が資金を出し合って事業を營み、利益をはかるものである。利益は、勿論、資金を出し合った人々の間に配當するのであるが、若し損失があれば、また其の人々が之を分擔せねばならぬのである。
會社には書籍や反物などを商うものもあれば、鐵や石炭などを掘るものもあり、蠶絲や綿絲などを製するものもあって、一々擧げ盡されない。
一人では出來ないような大きな事業でも、大勢の人々が資金を出し合って、會社を設けてすれば、たやすく出來るのである。
銀行も多くは人々が資金を出し合って設けたもので、金を貸したり、金を預ったり、爲替(かわせ)を扱ったりなどする。
金の入用な人は、銀行から借りて利子を拂い、金の餘って居る人は、銀行え預けて利子を取る。それだから銀行は雙方のために便利である。
銀行に預金をするには、當座預と定期預とある。當座預であれば、預けた金をいつでも引き出すことが出來るが、定期預は六箇月とか一箇年とか、きめた期間は引き出すことが出來ない。其の代り、定期預の方は、利子がいくらか高い。
銀行は、又、料金で爲替を取扱い、送金の便も計って居る。
銀行の中で、農工銀行というのは、特に農業や工業をする人に、金を貸す銀行である。
・ 練 習
一、會社のことをお話しなさい。
ニ、銀行とはどんなものですか。それを文にお作りなさい。
三、定期預と當座預との別をお話しなさい。
四、本字には、正字の外に、略字があります。次の略字を書いてごらんなさい。
會(正字)=会(略字)。 鐵(正字)=鉄(略字)。
當(正字)=当(略字)。 蠶(正字)=蚕(略字)。
鹽(正字)=塩(略字)。
■ 第十ニ課 爲 替
貨幣や紙幣は之をよそえ持って行ったり、よそから送ってよこしたりするのに、面倒でもあり、又、間違の起る恐もある。そこで為替という便利な方法が出來たのである。爲替にすると、手數もかからず、安全に且つ速やかに、金を送ることが出來る。
爲替は銀行でも、郵便局でも、扱うようになって居て、之を組むには、それぞれの手續がある。
郵便爲替には通常爲替・小爲替・電信爲替の三通りがある。
通常爲替を組むには、振出人は郵便局から用紙をもらって、それに金高、自分と受取人との居所及び氏名、拂渡局の名などを書き入れ、現金に料金を添えて差出すのである。そうすると郵便局で、二枚續きの證書を渡すから、其の中の一枚を受取人に送ってやるのである。受取人は、自分の方の郵便局から、其の證書と引きかえに、現金を受取ることが出來る。小爲替や電信爲替の組み方は、これと少しちがうところがある。
小爲替は料金が安いし、又何處の郵便局からでも、現金を受取ることが出來るから便利である。けれどもこれは、一口が拾圓までと限られてある。
電信爲替は料金は高いが、非常に早く間に合うから、急ぐ時には大層便利である。
・ 練 習
一、爲替の便利なことをお話しなさい。
二、通常爲替の組み方をお話しなさい。
三、小爲替と電信爲替とをくらべでお話しなさい。
四、次のことばを用いて、二つの短文をお作りなさい。
引きかえに。 何なりとも。
「巻六」から「巻七」になった途端、文章といい、内容といい、急に小難しくなりましたね。
対面での遣り取りがあった昔の金融機関が目に浮かびます。戦前の映画に出てくる銀行は、窓口に鉄格子があって物々しいです。
ありがとうございました。
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