華流武侠劇『天龍八部』を視聴していたら、台湾歌謡が急に懐かしくなってきた。初めての台湾旅行は1980年(昭和55年)、京成上野駅から有料特急スカイライナーに乗って開港間もない成田空港(当時は「新東京国際空港」)から飛び立った。思い起こせば、國泰航空公司(CX)のL-1011トライスター機で、台北・中正機場(現;桃園空港)経由香港・啓徳機場(現在廃港)行だったと思う。労組悪友どもにしつこく誘われて嫌々行ったのだが、爾後は1990年代初頭にかけて10回近く一人旅している。
再訪台を繰り返した理由は、次のような事情による。国産最新流行歌に興味を失くした時期であったことから、現地ラジオ・テレビで見聞きする台湾製歌曲が往年の日本歌謡曲風に聞こえて妙に懐かしくなり、すっかり魅せられてしまったからである。国内で買うよりはるかに廉かったこともあり、訪台の都度、大量の音楽メディアを土産に持ち帰った。そんなわけで、手前勝手な選曲で恐縮ながら、個人的にお気に入りの台湾歌謡(といっても、旧来の演歌風流行歌でない「校園民歌」と呼ばれるフォーク・ポップス調流行歌=ちょうど昭和40年代から流行った「カレッジポップス・カレッジフォーク」に相当)を聴いてみることにしよう。
今回は、『分手』(李碧華;1992年)からどうぞ。
分手(別れ) - 李碧華(り・ぴぃふぁ)
作詞:劉虞瑞 作曲:陳耀川 編曲:涂惠源
聽見有人說起關於你的消息
忍不住多問一句
他們說事情過了這麼久
到現在居然我還掛念你
我又何嘗願意面對這種問題
若不是身不由己
離開後的你應該也明瞭
這代價我們誰都付不起
如果說分手如此容易
總有人來人去
我又為何哭泣傷心
而姻緣本是註定
聚散各有道理
遲早總是該死心
如果說分手如此容易
看著人來人去
我又為何觸景傷情
若是我動了真情
忘不了你
是否你仍舊願意回心轉意
李碧華さんの歌手デビューは、奇しくも私奴が初訪台した年、1980年である。したがって、今や台湾だけでなく華字圏をはじめ国際的に活躍する歌手に成長した蔡幸娟さんとも同期生ということになる。だが、こちらは正反対の地味な経歴しかなく、長らくヒット曲がなかった。デビュー後12年経ち、三十路を過ぎてようやくヒットしたのがこの曲(『分手』)というわけ。つまり、大器晩成型ですね。アイドル歌手たちの媚び甘えるような外連味たっぷりの歌声と違い、なるほど「地味」は「滋味」に通じてオバサン然とした虚飾を纏わぬ安心感がある。なお、時代も違うが、この曲は「校園民歌」には分類されない。かといって、旧来の演歌系歌謡とも違う謂わば、現代台湾歌謡界に繋がる台湾ニューウェーブ黎明期の申し子とも言える歌曲である。
転載した北京語歌詞は繁体字中文のみだが、我々にも馴染み深い漢字なので邦訳せずとも大意は掴めよう。ただし、日本語と違う遣い方もあって何だかややこしい。
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