韓国の政治情勢が大変なことになっている。去る12月9日午後の韓国国会(定数300)で、野党提出の朴槿恵大統領弾劾決議案が賛成多数(234;反対56)で可決されたという。決議に必要な数は200(3分の2)以上。少数与党(128議席)とは言え、大半の与党議員まで「首領」を見限ったことになる。個人的な見方に過ぎないけれど、義理人情の板挟みにもがき苦しむだけで、日本人なら仲間を容易に裏切れない。ところが、韓国をはじめとするチャイナ文化圏は、究極の利益社会(ゲゼルシャフト)なのだ。時の権力者に媚び諂って栄耀栄華を貪りたがる反面、一旦落ち目と観るや忽ち翻意して叩く側に転じる。太古の昔から変わらぬ彼国の“御家芸”、としか言いようがない。
「民衆」とは、時として斯くも醜悪な“衆愚”と化す。「民主主義」を金科玉条の如く崇め信じて疑わない戦後日本人にとって、対岸の火事ではあるまい。巨悪独裁者のレッテルを貼られたヒトラー(独)にしろムッソリーニ(伊)にしろ、当初は公正な選挙に勝利して国民(民衆)の負託に応えた政治家だった。彼らを英雄視した両国民は、戦後になると手のひらを返すようにナチス(独)やファシスト党(伊)のせいにして「罪」を免れている。事情は異なるものの、我国とて同様である。全てを「軍部(皇軍)」の暴走で片付け、戦前(ご先祖様)と決別することで自らの存在意義(raison d'être)を担保しつつ、戦後を生き長らえている。戦勝国も例外ではない。敗戦国に全責任を押し被せ、自国の罪過(例;原爆による非戦闘員の大虐殺)に頬被りして“罪の意識”など毛頭ないかの如き厚顔無恥ぶりである。
「民主主義」の理念に遵うなら、国籍・年齢等一定要件さえ満たせば、賢愚の別なく選挙権が与えられる。しかも、結果に対する何らの責任も伴わない。つまり、選挙民(民衆)にとって都合のよい制度というわけ。何てたってオラが国の“主権者さま”なのだから当たり前。しかし、実はここ(如実知見に拠らず結果責任もない)に極めて重大な「瑕疵」がある。だから、「民主主義」の終着先は、独裁者を生むかポピュリズム(大衆迎合主義)に陥るしかないのだ。自分はクリスチャンではないが、バッハの『マタイ受難曲』や『ヨハネ受難曲』を聴く度に、人間の愚かさを思い知らされる。「ユダの裏切り」「ペテロの否認」「イエスを磔に追い込むユダヤ民衆」などがそれ。
韓国歴代大統領の「末路」を下記しておく、
1.李承晩(이승만) 在任期間;1948年7月~1960年4月
不正選挙が発覚して革命が勃発したため、失脚する。米国へ亡命。
2.尹潽善(윤보선) 在任期間;1960年8月~1962年3月
朴正煕主導の軍事クーデターにより、失脚する。
3.朴正煕(박정희) 在任期間;1963年12月~1979年10月
金載圭大韓民国中央情報部(KCIA)部長により、暗殺される。
4.崔圭夏(최규하) 在任期間;1979年12月~1980年8月
全斗煥・盧泰愚らの軍事クーデターにより、辞任させられる。、
5.全斗煥(전두환) 在任期間;1980年9月~1988年2月
退任後、クーデター、光州事件の首謀者として死刑判決を受ける。
6.盧泰愚(노태우) 在任期間;1988年2月~1993年2月
退任後、軍刑法違反で懲役刑を受ける。
7.金泳三(김영삼) 在任期間;1993年2月~1998年2月
特記事項無し。
8.金大中(김대중) 在任期間;1998年2月~2003年2月
北朝鮮と南北首脳会談を実現させ、在任中にノーベル平和賞を受賞する。
9.盧武鉉(노무현) 在任期間;2003年2月~2006年2月
弾劾訴追を受けるも棄却されて一旦復帰するが、退任後、収賄疑惑捜査を受けて自殺。
10.李明博(이명박) 在任期間;2006年2月~2013年2月
特記事項無し。
11.朴槿恵(박근혜) 在任期間;2013年2月~2016年12月現在(権限停止中)
12月9日の弾劾訴追を受けて、現在権限停止中。
棄却されれば復帰できるが、このまま辞任する意向と聞く。
権限停止中は、黄教安首相が大統領権限を臨時代行。
自分が生まれた年から始まる因縁があって、記憶にないのは崔圭夏だけ。約半年しか在職期間がないので、殆ど報道もされなかったのだろう。任期を全うし、退任後も無事(?)だった大統領は、数えるほどしかいない。
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